右の机にあるものは右手で、左の机にあるものは左手で取る。現在、これは作法として当たり前のように行われています。しかし、本来、導師として作法を行う際には、右にあるものも左にあるものも、すべて右手で取ることが基本でした。
ところが、ある時から「右のものは右手で、左のものは左手で取る」という作法が定着しました。そのきっかけは、真言宗のお坊さんの中に、体格が大きく、お腹まわりが立派なお坊さんがいたことに由来すると言われています。この一風変わった理由が、次第に伝統として受け継がれていったのです。
高僧の影響力や習わしが、こうした身近な事情から変化していくことは珍しくなく、伝統はこのようにして形作られていったのです。